2012年6月3日日曜日
利用規約のつくり方
photo credit: Indrani Soemardjan via photo pin cc
これまでに新規サービス用に利用規約をいくつか作ったことがあります。
今回は、そこから得た知見をメモ代わりにまとめてみたいと思います。
ちなみに、ワタシ自身には法律に関する専門的な知識はなく、
ここでいう「作った」は素案を作成したという意味です。
リーガルチェックは別途、弁護士の方にお願いしています。
では、利用規約を作る際のポイントは以下になります。
・サービスの内容を熟知する
まず、サービスの内容を理解していなければ規約を作ることは不可能です。
素案はどうしてもサービスを理解している内部の人間が作る必要があります。
外部の専門家(弁護士等)にお願いするすることも可能ですが、サービス内容の細部を理解してもらうためには、多くの時間とコストがかかります。
・サービスを作る上で基礎となった思想や組織文化を確認する
どういった動機で始まったサービスなのか?何を実現したいのか?誰に使ってもらいたいのか?組織は顧客とどのような関係になりたいのか?顧客をコントロールしたいのか?…etc.
サービスの持つ温度感とでもいいましょうか、思想や組織文化によって、そこに現れてくる内容やニュアンスが異なってきます。また、思想や組織文化と規約の内容が一致している必要があります。これはサポート体制やクレーム対応に影響してくる部分なので、慎重に検討しなければいけません。
・他社で参考になる規約を集める
類似した他社サービスが存在する場合は、それらの内容を参考にします。
同じような条件下でサービスを展開している場合、起こりうるリスクも同じであることが考えられます。他者どのように対処をしているのかを知ることは非常に重要です。
また、サービス内容の類似性だけではなく、対象とする顧客や利用シーン、提供する価値、存在するリスク…etc. 違う分野や領域の他サービスからも、部分一致のサンプルを集めることが重要です。日頃から他のサービスに注目してストックを増やしておくことをオススメします。
・集めたサンプルを熟読する
前述のように、規約の多くには作った組織の基本的な思想が反映されています。内容を熟読し、他者は顧客やリスクについてどのような考え方を持っているのかを読み解きます。
この時点で、自社のポリシーとマッチしないものは参考対象から除外します。ここは些細な点ですが重要なポイントです。他社サービスの内容を理解して、その上で規約の内容を理解する必要があります。ここを緩く考えると、後々、整合性を欠く原因となります。背景をよく理解しないまま、条文を安易に模倣をすることは避けましょう。
また、このステップはです。他社サービスの内容を理解して、その上で規約の内容を理解しないといけないので、興味のないモノだと単なる苦役でしかありません。何かが口から出そうになっても、堪えてがんばりましょう。
・文章をまとめる
集めてきたサンプルを「切って貼って」しましょう。センテンスごとに並べてみて文章を構成していきます。一通り並べたら、前後の文脈を考慮しながら順番を入れ替えたり、用語や表現を整えて統一感を出すことに注力しましょう。
・さぁ、もうすぐゴールです。
が、きっとみなさん気になっていることがあると思います。
ワタシも当初は気になっていました。
他者の規約を模倣しても問題ないのか?
気になりますよね。
ワタシも、素案なので拝借した文章で構成されていても問題ないだろう、きっとリーガルチェックのときに弁護士の方で直してくれるのだろう。
そう思っていました。
しかし、出来上がったものは原型を多分に残しているものでした。
心配になったので弁護士に確認をしてみると、
”似たようなサービスや似たようなリスクについて言及する場合は、内容もおのずと似たようなものになることは必然である。似てしまうことは仕方のないこと。”という回答でした。
そうは言われてもやはり気になるので、自分でも調べてみました。
すると、どうやら世間一般でも比較的ポピュラーなことのようでした。
先発・後発関係にあるコンペティター同士などは、ほとんど同じ規約を使っていたりします。規約類は著作物ではないと見なされて、著作権が発生する可能性は極めて低いそうです。
・リーガルチェックを依頼する
やっぱり最後はキチンと専門家に見てもらいましょう。気になる表現などは修正をお願いしましょう。
しかし、ここでも注意が必要です。弁護士の方々は、この時点でサービスに対する理解があまり深くないケースがほとんどです。また、みなさん職業上、リスクに対して過剰にヘッジしておこうとする傾向にあります。
その結果、必要以上に過剰な内容を盛り込んだ条項を追加してきたりすることがあります。こうした追加内容を、ちょうどよい加減で取捨選択する必要があります。思想や組織文化との整合性を確認しながらデザインしていかなければいけません。また、運用を勘案して規約が妨げとならないように配慮しなくてはいけません。
弁護士の方といえども、所詮は外部のヒトですから、ポリシーを守り通すのは素案を作ったヒトでないとできません。
あと、意外なポイントが一点あります。それは、規約は絶対ではないということです。
どういうことかというと、規約に書いてあるからといって、何でもそのとおりになるわけではないということです。
よくサービス窓口に相談すると、「規約に定められていますから」的な対応をされて、泣く泣く引き下がることがありますが、実は規約はそんなに万能ではありません。あまりに理不尽な内容だったりすると、法的には無効の場合もあります。
また、作る側も無効であることを承知の上で、あえて宣言として盛り込んでいるケースというものもあります。ダメもとでも言っておいて牽制しておこうということです。
実際に裁判やってみないと、どうなるかわからない、というグレーな条文もあります。
これは過去にも判例などが無く、良いも悪いも判断しかねるけど、たぶんそうなるのではないか?というものです。可能性には言及しておこうということです。
規約に盛り込んだから、その規約に了承しているから、という理屈で何でも提供側の思うとおりになるわけではありません。規約にはその組織の思想が現れますから、フェアに誠意を持って作成しましょう。
以上、何かの参考になれば幸いです。
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