中古車価格が過去最安値に落ち込んでいる。販売・買い取り会社間のオークション平均落札価格はこの1年で18%下がり、初めて1台25万円を割り込んだ。復活したエコカー補助金を使い低燃費の新車を購入する動きが広がり、中古車流通量が増えた。コンパクトカーなど単価の安い車の増加も影響しており、店頭の安値も目立ってきた。(出典 2012/4/14 日本経済新聞 電子版)
補助金や優遇税制により新車販売は好調になってきているが、下取り車として発生した中古車は販売には結びついておらず、中間流通市場でダブついている。
補助金復活前は、制度復活により、市場に下取り車が豊富に流通するようになるため、業界は上向きになるのではないか、っといった声が中古車関連の各方面から聞こえてきていた。しかし、始まってみると実際には期待していたような状況にはないようだ。
こうした状況に少なからず影響を与えていると思われるのが、「エコロジー」というイデオロギーではないだろうか。今回のエコカー補助金もまさにそのとおりなのだが、「エコロジー」であるということがある種の免罪符になりつつあり、大量生産・大量消費の次の言い訳になっている現実がある。
実際に、家庭のエネルギー消費量は10年前と比べて1.3倍。今年はそれ以上の数値が出る見込みになるそうだ。「エコだから」を理由に大量消費からシフトできていない現在の状況を、「エコジレンマ」というそうだ。(エコジレンマの詳細)
こうした点を踏まえると、「エコカーを新車で購入する」ということは、環境や社会に対しての善行であり、倫理的にもすばらしいことである。といった思想や感情が少なからず今のユーザーにはあるのではないかと推測される。
つまり、単純に新車か中古車かといった比較ではなく、イデオロギー的に「善」なのはどっちか?という対比になっているのではないだろうか。
この構造の中で行われる対比は、合理性を欠いており必ずしも事実に基づいてはいない。一説では、新たにエコカーを生産して乗るよりも、中古車を活用したほうが環境への負荷・エネルギー消費量は少ないといった調査結果もあるそうだ。(「新型プリウス」よりもエコな「中古車」、米国で人気)
エコロジーという概念や取り組みはすばらしいもので、社会全体で取り組んでいかなくてはいけない重要な課題ではあるが、利益誘導を含む一義的な扇情文句で、社会的なマインドを醸成させてしまうのは危険なことのように感じる。
当たり前だが、中古車はエコカーの対極にある「悪」ではない。多様な選択肢のひとつである。しかし、現在の状況を踏まえると、積極的に中古車の有用性やその価値を訴求していく、啓蒙的な取り組みが必要になっているのではないだろうか。