2012年6月17日日曜日
若いチームをマネジメントするヒトへ
photo credit: woodleywonderworks via photo pin cc
近年、様々な組織において、世代間の価値観の断絶やコミュニケーション不全が問題となっています。これは、高度成長期からバブル期までの間に組織人としてのアイデンティティを確立させたヒト達による”マネジメントらしきもの”の弊害だと思います。もはや、彼らのマインドや信条では、若いチームは動かなくなっています。
今回は、若いチームをマネジメントするためのポイントを、自分の経験から得られた知見に基づき簡単にまとめたいと思います。これはマネジメントのノウハウ本やコンサルのセンセ達がいうマネジメントの思想や手法とは異なります。また、あらゆる組織・環境・カルチャーにおいても絶対解であるといったものではありません。
まず、若いチームをマネジメントする場合に一番重要なことは、マネジメントする立場にあるということは「ただの役割」であると認識することです。チームのメンバーよりも能力に優れ、人間としても上等であるが故にマネジメントをする立場にある、といった意識がもしあるのであれば、その時点でアウトです。そんなマインドはすぐにでも捨てましょう。
バカバカしいと思うかもしれませんが、実際にはそう思っているヒトはかなり多いです。マネジメントする立場というものは、チームにおける必要な役割のひとつに過ぎず、他の役割となんらかわりはありません。行う業務が他のメンバーとは異なり、実務ではないというだけです。
また、チームのメンバーはモノではありませんし、お手伝いでも奴隷でもありません。そこを履き違えてモノのように扱ったり、自分の意思を反映させるためのお手伝いのように扱ったりすることは、愚かしい間違いであると言わざるを得ません。そうした態度や思想というものは、チームに間違いなく見透かされます。正体を見極めたチームがあなたを信頼することはないでしょう。そしてチームが高いパフォーマンスを発揮することもありません。
尊大な思想や態度は何も生み出しません。もし、自身に傲慢な心持が少しでもあるのならば、早急に改めることをおすすめします。尊大に振舞う人物にヒトはついてきません。ましてや、耐え忍ぶ先に年功序列に基づく”いろいろ”が、保証などされていないことを十分に知っている若いメンバーには通用しません。
次に、マネジメントをする立場にあるヒトも、ご多分に漏れず全知全能ではないということを認識する必要があります。これまた引続きバカバカしいことではありますが、あらゆる点でチームのメンバーより自分が優れていると考えているヒトは本当に多いです。人間なので得意不得意は当然ありますし、あらゆる点でメンバーよりも優れているということも通常ありません。
しかし、メンバーの言動に対して、いちいち自身の考えを押し付け、自分が優れていて正しいと定義し、従わせようとするヒトは後を絶ちません。マネジメントをする立場のヒトがやるべきことは、目指すべき方向を示し、ゴールがどこかを明確にすることです。あとはチームのメンバーが担うべき部分です。逆に言うと、あとはマネジメントする立場のヒトが干渉するべき部分ではないということです。
この一線を越えてしまうと、メンバーの自主性を損ない、アイディアの芽を摘み取り、モチベーション・ロイヤリティを低下させる…etc. ネガティブな結果しか招きません。
全て任せましょう。監視や監査をするといったアティチュードもアウトです。必要なことは、始める前に多くのことを共有することです。十分に話し合ってイメージを共有することです。
任せてみた結果がクオリティに問題があったり、イメージと違っていた場合は、事前の共有に失敗したということです。つまり、それはあなたの問題です。メンバーの問題ではありません。イメージを創り、共有すること。それこそがマネジメントをする立場にあるヒトの仕事です。
ワタシはプレイングマネージャというものは詭弁だと考えています。プレイヤーとマネージャはまったくの別物です。この二つは異なる性質のものであり、一部の天才以外は両立させることは不可能だと考えます。成立すると考えている組織や個人は、マネジメントを理解できていないか、もしくはマネジメントをどのように評価していいかがわからない、のどちらかだと思います。わからないので、結局は実務部分でしか捉えたり評価したりができないのだと思います。
このプレイングマネージャはある種の甘えを生み出しています。前述の若いチームをマネジメントするといったことが十分にできていないことの言い訳になっているケースが多いのではないかと思います。本人も組織も、両方やっていて大変だから仕方がないよね、と妙なコンセンサスを形成して問題を深堀りしない。そして組織はダメになっていく。若いチームは腐っていく。
若いチームをマネジメントする場合、プレイングマネージャは適していません。
これまでのことをまとめると、
①マネジメントをするという立場は「ただの役割」だと認識する。
②マネジメントをする立場のヒトは、自身の足りない能力を知る。
③マネジメントに専念する。
若いチームをマネジメントする場合、
これらがポイントになるのではないかと思います。
以上、何かの参考になれば幸いです。
ラベル:
マネジメント
2012年6月7日木曜日
中古車と「物語」と妄想と思い込みのカオス
photo credit: Chris J Bowley via photo pin cc
モノが豊富で成熟した社会では、商品を売るために必要になるのは「物語」です。
その商品が生まれて顧客の手元に来るまでに発生した、ありとあらゆるストーリー。
未来に発生するであろうストーリーも含まれるでしょう。
その商品にどんなストーリーがあるのかを発掘して、どのストーリーを顧客に紹介するのか。
こうした編集を行うことが販売店のひとつの役割になっていくと思います。
(「物語」についてはこちらのエントリーでも触れています)
っという話しを踏まえて以下の図をご参照ください。
これは中古車の価値の変化について図にしたものです。
中古車は新車に近ければ近いほど価値が高いとされます(一部例外ありますが)。
つまり新車からポジションが遠くなればなるほど価値が目減りしていきます。
これは新車からの距離以外には価値基準がないことが原因で起こります。
もし、違う切り口による価値基準で評価ができるようになれば、
価値の下落を緩やかにすることができます。
残念ながら、新車からの距離という価値基準はかなり強力なため、
大半の中古車はこのルールから完全に逃れることはできません。
古ければ古いほど価値がある、というパラダイムシフトがおこるクルマは、
一部のビンテージだけになります。
そこで冒頭の「物語」の話になります。
”その商品が生まれて顧客の手元に来るまでに発生した、ありとあらゆるストーリー”
これが重要になってきます。
そして、新車には無く、中古車だけが持つコンテンツというものがあります。
それは「オーナー」と「歴史」です。
なんだか奇異で大げさに聞こえるかもしれませんが、オーナーとクルマのこれまでの付き合い自体がコンテンツになり得るということです。
初めて買ったクルマ、亡くなった祖父が乗っていたクルマ、このクルマで何処へ行った、そこでこんな人生のイベントがあった…etc.
これらは唯一無二のリアルな、そして事実に基づく貴重な「物語」です。
次の乗り手がこれらの「物語」を受け継いで、そして新たな「物語」を紡いでいく。
いうなれば「物語」のリレーです。
どんなフォーマットで「物語」の受け渡しをするかは熟考する必要があると思いますが、
もしかすると、実際に顔を合わせてお茶でも飲むのが一番いいかもしれません。
クルマを売りたいヒトと買いたいヒトを結びつけるプラットフォームを整備して、
お茶をしながら商談(面談?)をして譲り渡す・譲り受ける。
飼い猫を里子に出すような心境に近いかもしれないです。
C2Cで中抜きかぁ!?っと思われる方がいるかもしれませんが、
そうではありません。
ワタシは将来的にはC2Cに限りなく近いモデルが、市場においてそれなりのボリュームを持ってくると考えています。しかし、コンシューマ同士には限界があるので、必ずプロフェッショナルであるビジネスの存在が必要とされる。そう予想しています(詳しくはコチラをご参照ください)
B2Cの現場でも「物語」の受け渡しを効果的に利用することは可能です。
「物語」が響くエンドユーザーは必ず存在すると思います。
誰かに強烈に刺されば、他のヒトを惹きつけることができるはずです。
そうすれば、単純に新車からの距離だけが価値基準になる、といったことはなくなるのではないでしょうか。
2012年6月3日日曜日
利用規約のつくり方
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これまでに新規サービス用に利用規約をいくつか作ったことがあります。
今回は、そこから得た知見をメモ代わりにまとめてみたいと思います。
ちなみに、ワタシ自身には法律に関する専門的な知識はなく、
ここでいう「作った」は素案を作成したという意味です。
リーガルチェックは別途、弁護士の方にお願いしています。
では、利用規約を作る際のポイントは以下になります。
・サービスの内容を熟知する
まず、サービスの内容を理解していなければ規約を作ることは不可能です。
素案はどうしてもサービスを理解している内部の人間が作る必要があります。
外部の専門家(弁護士等)にお願いするすることも可能ですが、サービス内容の細部を理解してもらうためには、多くの時間とコストがかかります。
・サービスを作る上で基礎となった思想や組織文化を確認する
どういった動機で始まったサービスなのか?何を実現したいのか?誰に使ってもらいたいのか?組織は顧客とどのような関係になりたいのか?顧客をコントロールしたいのか?…etc.
サービスの持つ温度感とでもいいましょうか、思想や組織文化によって、そこに現れてくる内容やニュアンスが異なってきます。また、思想や組織文化と規約の内容が一致している必要があります。これはサポート体制やクレーム対応に影響してくる部分なので、慎重に検討しなければいけません。
・他社で参考になる規約を集める
類似した他社サービスが存在する場合は、それらの内容を参考にします。
同じような条件下でサービスを展開している場合、起こりうるリスクも同じであることが考えられます。他者どのように対処をしているのかを知ることは非常に重要です。
また、サービス内容の類似性だけではなく、対象とする顧客や利用シーン、提供する価値、存在するリスク…etc. 違う分野や領域の他サービスからも、部分一致のサンプルを集めることが重要です。日頃から他のサービスに注目してストックを増やしておくことをオススメします。
・集めたサンプルを熟読する
前述のように、規約の多くには作った組織の基本的な思想が反映されています。内容を熟読し、他者は顧客やリスクについてどのような考え方を持っているのかを読み解きます。
この時点で、自社のポリシーとマッチしないものは参考対象から除外します。ここは些細な点ですが重要なポイントです。他社サービスの内容を理解して、その上で規約の内容を理解する必要があります。ここを緩く考えると、後々、整合性を欠く原因となります。背景をよく理解しないまま、条文を安易に模倣をすることは避けましょう。
また、このステップはです。他社サービスの内容を理解して、その上で規約の内容を理解しないといけないので、興味のないモノだと単なる苦役でしかありません。何かが口から出そうになっても、堪えてがんばりましょう。
・文章をまとめる
集めてきたサンプルを「切って貼って」しましょう。センテンスごとに並べてみて文章を構成していきます。一通り並べたら、前後の文脈を考慮しながら順番を入れ替えたり、用語や表現を整えて統一感を出すことに注力しましょう。
・さぁ、もうすぐゴールです。
が、きっとみなさん気になっていることがあると思います。
ワタシも当初は気になっていました。
他者の規約を模倣しても問題ないのか?
気になりますよね。
ワタシも、素案なので拝借した文章で構成されていても問題ないだろう、きっとリーガルチェックのときに弁護士の方で直してくれるのだろう。
そう思っていました。
しかし、出来上がったものは原型を多分に残しているものでした。
心配になったので弁護士に確認をしてみると、
”似たようなサービスや似たようなリスクについて言及する場合は、内容もおのずと似たようなものになることは必然である。似てしまうことは仕方のないこと。”という回答でした。
そうは言われてもやはり気になるので、自分でも調べてみました。
すると、どうやら世間一般でも比較的ポピュラーなことのようでした。
先発・後発関係にあるコンペティター同士などは、ほとんど同じ規約を使っていたりします。規約類は著作物ではないと見なされて、著作権が発生する可能性は極めて低いそうです。
・リーガルチェックを依頼する
やっぱり最後はキチンと専門家に見てもらいましょう。気になる表現などは修正をお願いしましょう。
しかし、ここでも注意が必要です。弁護士の方々は、この時点でサービスに対する理解があまり深くないケースがほとんどです。また、みなさん職業上、リスクに対して過剰にヘッジしておこうとする傾向にあります。
その結果、必要以上に過剰な内容を盛り込んだ条項を追加してきたりすることがあります。こうした追加内容を、ちょうどよい加減で取捨選択する必要があります。思想や組織文化との整合性を確認しながらデザインしていかなければいけません。また、運用を勘案して規約が妨げとならないように配慮しなくてはいけません。
弁護士の方といえども、所詮は外部のヒトですから、ポリシーを守り通すのは素案を作ったヒトでないとできません。
あと、意外なポイントが一点あります。それは、規約は絶対ではないということです。
どういうことかというと、規約に書いてあるからといって、何でもそのとおりになるわけではないということです。
よくサービス窓口に相談すると、「規約に定められていますから」的な対応をされて、泣く泣く引き下がることがありますが、実は規約はそんなに万能ではありません。あまりに理不尽な内容だったりすると、法的には無効の場合もあります。
また、作る側も無効であることを承知の上で、あえて宣言として盛り込んでいるケースというものもあります。ダメもとでも言っておいて牽制しておこうということです。
実際に裁判やってみないと、どうなるかわからない、というグレーな条文もあります。
これは過去にも判例などが無く、良いも悪いも判断しかねるけど、たぶんそうなるのではないか?というものです。可能性には言及しておこうということです。
規約に盛り込んだから、その規約に了承しているから、という理屈で何でも提供側の思うとおりになるわけではありません。規約にはその組織の思想が現れますから、フェアに誠意を持って作成しましょう。
以上、何かの参考になれば幸いです。
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